#0317　ドグラ・マグラ式カップ焼きそばの作り方

（ドグラ・マグラのパロディーだから事前に言っておきますけどこれはドグラ・マグラのパロディーです。オマージュと申しましてもあながち間違いではありません。）

巻頭歌

縮れ麺よ

何故躍る（お湯の中で）

麺喰人（ヌードルイーター）の心がわかって

おそろしいのか

第一の所作

「アッハッハッハッハッ……ゴホンゴホン……妙な顔をしているじゃないか……ウフフフフフフ是非ともカップのふたをはがしていないと具合がわるいと……ゲッヘンゲッヘン……云うのかね。ゲヘゲヘ弱ったなドウモ……こうなんだよ。

君は今朝早く……多分午前一時頃だったと思うが、あの七号室のまん中に大の字形に寝ていた。そうして眼を醒ますと、イキナリカップ焼きそばの蓋を一気呵成に剥ぎ取って、タッタ一人で騒ぎ廻ったろう。」

白い、新しいゴワゴワした石油製品みたような物体が二枚、私の手の中にある。これが蓋だとでも云うのか。私の手はというと、全体にドス黒く、垢だらけになっている……そのキタナラシサ……。

……いよいよおかしい……。

開け口の無い側の蓋の附け根には、やはり岩乗な蓋と同質の湯切り口が一個、開け口と反対の方向にして備えてあるようだが、その上の二重蓋が、キチンと敷き展べたままになっているところを見ると、まだ誰も湯切りをしたことがないらしい。

……おかしいぞ…………。

第二の所作

「……扨（さて）はヤット今までの夢遊状態から醒めかけているんだナ……と思って、なおも大急ぎで加薬の袋を取り上げるべく、二階へ引返して来た訳だが、そのうちに夜が明けてから、やっと居睡りから眼を醒ました吾輩が、少々気抜けの体でボンヤリしていると、間もなく若林が例の新式サイレンの自動車で湯を持て馳け付けて来る様子だ。……こいつは面黒い。君が夢中遊行の状態から醒めかけ、カップ焼きそばを作ろうとしている事を、早くも誰かが発見して若林に報告したと見える。」

第三の所作

「……ああ愉快だ。こうやって自殺の前夜に、宇宙万有をオヒャラかした気持ちでお湯を注いで行く。注ぎくたびれるとスリッパのまま、廻転椅子の上に座り込んで、膝を抱えながらプカリプカリと、ウルトラマリンや、ガムボージ色の湯気を吐き出すカップを見つめている。……そうするとその湯気が、朝雲、夕雲の棚引くように、ユラリユラリと高く高く天井を眼がけて渦巻き昇って、やがて一定の高さまで来ると、水面に浮く油のようにユルリユルリと散り拡がって、霊あるものの如く結ぼれつ解けつ、悲しそうに、又は嬉しそうに、とりどり様々の非幾何学的な曲線を描きあらわしつつ薄れ薄れて消えて行く。それを大きな廻転椅子の中からボンヤリと見上げている、小さな骸骨みたような吾輩の姿は、さながらにアラビアンナイトに出て来る魔法使いをそのままだろう…………ああ睡い。ウイスキーが利いたそうな。ムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャ……窓の外は星だらけだ。……エ——ト……何だったけな……ウンウン。麺一本か……「麺一本、見付けて博士世を終り」か……ハハン……あまり有り難くないナ……ムニャムニャムニャムニャムニャ……………ムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャムニャ……………」

「どうだ……３分経ってしまったか」

という声が、不意に私の耳元で起った……と思ううちに室の中を……ア——ン……と反響して消え失せた。

第四の所作

ナカナカ機敏なものだが、扨（さて）馳け付けて来てドウするつもりか……となおも物蔭から様子を見ていると、若林は君の頭を散髪さして湯に入れて、堂々たる大学生の姿に仕立て上げてから、君の室と隣り合わせの六号室に入院している一人の美少女に引き合わせたろう。……しかも、それは君の許嫁だというのでスッカリ君を麺喰らわせたろう」

「エッ……それじゃあの娘は、やっぱり精神病患者……」

「そうさ。しかも学界の珍とするに足る精神異状さ。大事の大事の結婚式の前の晩にカンジンカナメの花婿さんから、思いもかけぬ『変態性慾の心理湯切り』なぞいう途方トテツもない夢遊発作を見せられたために、吾れ知らずその夢遊発作の暗示作用に引っかけられて、その花婿さんと同じ系統の心理遺伝の発作を起して、とりあえず麺を全部シンクに流してしまった。ところが、若林の怪手腕によって、そこから麺を蘇らせて来ると、今度は千年も前に死んだ玄宗皇帝や楊貴妃に加薬の袋を破いてぶちまけさせたり、居もしない姉さんに焼きそば混ぜないと云い出したり、又は赤ん坊を抱く真似をして、お前は焼きそばを食べるんだよと云ったりしていた……尤も今では、よほど正気付いてはいるがね……」

「……ソ……それじゃ……ア……あのカップ焼きそばの……名前は……何というので……」

「ナニ。名前……聞かなくたってわかっているだろう。音に聞えた焼きそばの小町さ……ペヤングさ……」

「……エッ……ソ……それじゃ……僕は日清焼きそばＵＦＯ……

▼チャチャラカ、チャカポコチャカポコチャカポコ。あ——ア。ナント皆さん紳士や淑女よ。お立ち会い衆の大勢さまよ。これが私のカップ焼きそばじゃ。

インスタントなんどというては。四角四面のカップ作って。機械製麺、加薬に粉調味料と。蝋損の陳列棚に並べ飾って威張っているなら。こんな熱湯火傷患者が出来るは当然。これを防ぐが目下の急務じゃ。そんなカップ。？見当り次第に。タタキ潰すが何より急務じゃ……スカラカ、チャカポコ、チャカラカ、チャカポコ。チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……

…………ブウウ——————ンンン——————ンンンン………………。（多分此の音は蝋損の自動電磁開閉式扉が開閉せしむる時の音であろう）

セルフツッコミ

はよ焼きそば食えや！！（でもいっぺんシンクに落ちてますな）

シンクから麺を蘇らせた若林の怪手腕www

楊貴妃の役目が地味過ぎるwww

かやくの袋って湯注ぐ前に入れとかなくない？？？www

3分経ってからかやく入れたらかやくが固いがな！！（←実際それで間違えた奴）www

チャカポコってカップ焼きそば叩き潰す音やったんかい（しかもローソンの陳列棚のやつを）WWW

改作（怪作）：ＹＳ（ドグマグを読み始めて3日目にして早くも精神に重篤な異常を来し、斯様な怪文を認めた次第である）

平成の次の元号元年(2019年)1月14日

抜粋:

ドグラ・マグラ